*ヒューマンドキュメントストーリー【1】

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※A Certain Human Story  『 That time Those days 』

Part 1、 《 笑    子  》  ・・はじめての交際・  (1) 


太平洋側にある、中部東海地方の、海に面した静かな湾・・
蟹の挟みのような形をなした、三河湾大浜港の海辺
大浜警察署に近い、川と海を目の前にした大浜下地域の浜家という細い路地の家が密集した漁師町で
笑子は、生まれ育った

浜辺までは、歩いて2~3分 100mほどである
同じく、勝也も笑子の家から 
4kmほど、海辺から離れた、新川という町で生まれ育った

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新川は、粘土を材料とした窯業、特に瓦や煉瓦、土管業を家業として営む人が多いところだ
が、二人の通う小学校、中学校は学校区の地域性から異なっていた

勝也の家から、150mほど坂を下った直ぐ下には、川幅が25mほどの
海と油が淵(湖・・蓮如池とも言う)に通じた、新川運河が流れていた
勝也の三人の兄達は、そろって近くに有る竈会社に勤め営業販売のため家を離れ
遠く、九州地方にまで、外交セールス仕事の旅に出ていた
仕事を求めて、わざわざ九州地方から関西、東海、関東に
故郷を後にする家族や人が多い中、そんな時代の流れとは逆行した動きだった
異郷の地から家に帰ってくるのは、盆か正月で
年に、一度か二度ほど帰ってくるか来ないかだ
兄たちは、嫁を伴い帰ってくると1~1ヶ月半ほどは、ぶらぶらと家にいた
その後、自分達で独立し、やはり九州の熊本、大分、鹿児島と、各県をまわり三兄弟で
家庭用品を主としたセールス販売をするようになった

家には、父親母親と姉二人それと妹、弟の7人家族で暮らしていた
上の男の三人の兄たちとは随分年も離れており、育ってきた中で兄たちと
一緒に生活を共にする事は、盆や正月の帰省時を除けば殆んどなかった
勝也は、長男ではなかったが家に残っている男では一番上に当たった
父親から、家の跡取りになって欲しいと望まれ、可愛がられて育ってきた
小学校までは、父親と一緒に寝ていたせいか、勝也も父親が大好きな少年だった

年甲斐もなく、父親は還暦もすぎたのに原動機付き自転車の
運転許可証を、本署のある大浜警察署まで行き、取得していた
家の中の地べたには、父親の乗ることのない原動機付き自転車や
兄きたちのバイクが、いつも置いてあった
そんな影響を受けてか、勝也は15才の誕生日を迎えると直ぐ同じように
大浜警察署までいって申請し
原動機付き自転車の、運転許可証を取得した

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1961年(昭和36年)春・・・
中学を卒業すると、笑子と勝也の二人は
それぞれ 3~6kmばかり家から離れた所にある隣町の
自動車部品メーカーで、600人ほどの会社に就職した

この会社は、四国愛媛出身の渡部社長が本来軍需の航空機部品の製造で設立した会社だ
時代の流れを先見し、自動車部品の製造業に方向転換し急成長していた
が、土着民でなくよそ者の社長への評判は悪評ばかりで妬みなのか地域社会から、良い噂は耳にせずまったく出てはこなかった
九州や岐阜など、地方や山河出身者への風当たりもきつく見下げた目、白い目で蔑すんでみていた
生きるため、食べるため、子供たちや老いた親に食べさせるため、仕事を求め生まれ故郷を離れこの地方に、そんな人たちが毎月驚くほど多く集まってきた

仕事に不自由せず、地域性に恵まれてか、勝也のクラスの6割、学年でも6割強の生徒は進学せず就職し職に就いいた
この地方は、工業商業を含め、時代の主流を形成していく産業に恵まれ
その後、工業地のメッカとなるべく成長していった
仕事に苦労せず、しごく恵まれた環境が整い、揃っていた

二人は、家や親に買ってもらったであろう、新品の自転車を用いて通勤していた
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そのため、自転車置き場が生協の隣に大きく設置されていた
この年の新入社員の同期生は、80人ほどで近隣に住む者が殆んどだった
入社してからも皆、始めての社会生活で緊張とはちきれんばかりの
夢と希望に満ち溢れ、意気揚々とどの目も光輝いていた
笑子は、手の器用さを買われてか製造部の小物部品組み立てラインに配属され
勝也は品質管理の検査部門に配属された

二人がお互いを知り意識しあうようになるまで、三ヶ月ほどの日にちが掛かった
笑子という女の子の存在を知り、勝也が意識しだしたのはまだ中学を出て
半年もたたない、夏にさしかかる時期だった
恋人として、付き合いたい・・という感情を抱いた
これが、生まれて初めてのことだった
笑子は、体の均整がスラーッと取れた、褐色の肌で目が切れ長で細く
贅肉のない健康的で
口数は少ないが、明るく笑いのある魅力的なオーラをかもしだす娘だった

勝也は、家から3kmほど離れた市内にある
県立高校の、定時制機械科の夜間部にも入学し
仕事を定時で終え、毎日通っていた
丁度、勤務先と学校とが家の中間点に位置していた
7月になった頃の、授業が終わったある夜
菜種店の倅で、いつもひょうきんでユニークだった
人気者の勝治君が、校舎の庭の大木に首を吊って自殺した
次の日の明け方に、その姿が発見され
翌日の新聞に載り、騒然と話題になった

まさかの同級生の自殺に、困惑した
なぜだ・・・
疑問は、今もなお、解けないままでいる

お構いなしに
あわただしく、容赦なく
日めくりは、めくられ、破られてゆく
初めての学期末テストも、何とか終わった
中学時代は、クラスで4~7番目の成績を取り
学年でも、統一テストでまあまあの成績を取っていた
そんなレベルの成績が取れていないことは、勝也にはわかっていた
それまでのように、徹夜に近い一夜付けの猛勉をも机に向かってしなかった
勝也の心は、モヤモヤと壁に当たっていた
社会に出てはみたものの、何かが不満で物足りなく違っているような気がしていた

そんなある日の昼休み、母親が作ってくれた弁当を一色出身の鈴木建治ら仲間数人とでいつものように食べた後、生協に行き飲み物など買い飲んで戻り道を歩いていた途中で同じように 
数人で歩いていた女性たちと、すれ違った

勝也は、一瞬目と心を奪われた
心臓が、ヒヤーッとし急にドキドキした
インスピレーションというやつだ
その中にいた1人が、笑子だった

わらう子と書いて 《 え み こ 》

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その、静かな一皮目でソッと或いはジーッと、見つめられると
何か、語られ、誘われているように、吸い込まれる娘だった
一皮目の女性に惹き付けられたのは、これが始めてだ
それからの勝也は、笑子のことが気になって仕方がなかった
サラーッとした、爽やかな髪の毛から健康的で
優しげで、端正な顔立ち
均整の取れた、スラーッとした体つき
褐色の、肌の色
笑った、顔
陰のあるような、寂しい顔
大人びた、顔
話す表情と、ひとつひとつのなにげない仕草
笑子の、何もかもに、魅力を感じ虜になっていった

わざと会えるよう、その子達の居そうな所をうろうろした
笑子のことが知りたくて、色々と聞き込みや、情報集めをした
得た噂によると、部品整備係の、岡部と既に付き合っているらしい
岡部は、ゴロツキ達がバックに付いていると、噂される不良じみた男だ
フォークリフトを鮮やかに運転する、男前の部品整備係で吉良の梅田君だったら
かなわないと、諦めただろうが
勝也は、メラメラと恋の対抗意識を、燃やした
自分の心を、惹きつけ好きになった娘が
他の男を選び付き合おうとしていることを知り、悔しかった
勝也は、今まで中学時代も女性達から好まれ慕われた人気者で
女性に振られたり、嫌われた経験は一、度もなかった
そんな女性達から、「Kさん」と、影のニックネームで呼ばれていたことさえ、知らないでいた

岡部誠が、笑子に付き合いを申し込んでいる
二人は、まだ正式には付き合っていなかった
まだ、正式に返事もしていないらしい
勝也が、笑子と出会ったのはそんな時期だった
それからというもの、寝ても冷めても勝也の頭の中と心を笑子が占領した
笑子の傍には、いつも仲良しの小柄で色白でポチャッとした理恵と
瞳が大きく、陽気な順子が必ず居た
仲のいい三人娘で、同じ大浜地域で家も近いらしく幼い頃からの友達らしかった
そんなある日の、45分の昼休み休憩時間に
勝也は思い切って、友達の理恵を通じ
笑子に

「 好 き だ 」 と告白し、交際を申し込んだ

純情だった勝也は
偉ぶっていても、笑子に対し直接、その言葉を掛けることが出来なかった
理恵は「笑子は愛くるしい顔で、数日後に返事をする」と言ったと伝えてきた
それから、恥じらいながらも、たわいもない話を直接チョコマカするようになってきた
が、肝心な話は怖くて出来ないでいた
そんな日々を送りながら、いよいよ笑子からの返事の日が来た
岡部と共に、笑子の口からの直接の返事を待ち・・聞いた

「勝也くんと 私つきあうわ」 と、笑子は言った

天にも昇る、嬉しい気持ちが勝也をつつんだ・・嬉しくて身震いがした
勝也は、笑子に「君の写真が欲しい」と頼み
3枚の写真を受け取り、宝物のように机の引き出しに入れ
大事に時あるごと眺め、一人二ヤッとほくそ笑いをした

7月末の、夏の晴れ渡った日曜日始めてのデイト・・

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勝也が運転し、50ccのバイクで後部に笑子が乗って
風を切り、歌を口ずさみ大声で話しながら
知多半島の、野間の海岸まで飛ばした
野間の燈台と、海辺にごろごろと並び立つ 5~10mもの大きな岩や石は
海から打ち寄せる壮大な波と、白く泡立つ飛沫とが融合し
絵の中に溶け込んだかのような美しさと、ロケーションをかもしだしていた
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心地よい海風が、そこに立つ二人の体に、次から次へ
風笛を ヒュー ヒューならし吹き突けた
二人は、海を真横に仕切るよう造られた防波堤へと、歩んだ
まるで、二人だけの世界を演出してくれているような、大自然からのプレゼントだった
眩しく照りつける太陽、その真下で降り注ぐ陽射しを浴び
波間からキラッ キラッと跳ね返すうねる海の色

笑子が用意してきた弁当を、味わいながら美味しく食べた
倖わせに包まれ、周りにいた人たちも消え
二人だけのために時を刻んでいるかのような、ひと時が流れた
やがて、防波堤から戻り砂浜に降り立ち、浅瀬の海の中へと足を進めた
捲し上げたズボンとスカートが
水しぶきを上げながら
打ち寄せる波にかかって、それぞれ濡れた
いつまでもいつまでも、ワーッ!! キャーッ!! と波をかけあい
じゃれあい はしゃぎながら波打ち際で戯れた
そして、陸の横から突き出たもう片方の防波堤に笑子は登っていき
立ち止まり、砂浜にいる勝也を見下ろすように見た
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太陽が、西空に沈む準備をし始め
防波堤に立った、笑子の斜め後ろから
いっぱいの茜色に輝く、光を浴びせ
大きく、スクリーンの中のヒロインのように浮かびあげた


永遠に脳裏のなかに

刻み込んでしまう

鮮烈な笑子の姿と仕草を

シルエットで映し出した・・・


* **>※『 あの時 ・ あの頃 』Part 1、《笑 子》(1) * E N D *

Continued on the following page. ・・・
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  by raymirainya | 2006-09-16 17:05 | あの時あの頃1-1

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