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※ヒューマンドキュメントストーリー【7】

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※A Certain Human Story  『 That time Those days 』

Part 3、 《  瑠 美 子   》  ・・芽生える純愛・  (1) 


始めて迎える夜間高校の夏休みに入った
会社も丁度7月下旬に連休がある
夜の時間が空白になると
解き放たれた自由さを感じる
馴染んだ生活パターンのリズムも変わる
連休を利用し高原旅行に行く計画をたてた
一泊二日で中学時代から親友になった西端の恒夫くんと二人で中央線を利用して長野方面にいくことに決め
上諏訪まで行き蓼科高原白樺湖~~車山高原~霧が峰高原へ行った
始めての信州
諏訪湖は思っていたより意外と小さな湖だった
標高の高いここの空気は澄み切っていておいしい
しばし大自然がおりなす景観を堪能し
上諏訪湖から念願の白樺湖までバスに揺られながら行き
白樺湖で手漕ぎボートを漕ぎながら東京から来たという綺麗な女性達と出会い写真を撮った
大自然の中に身を置くと心まで雄大になる
話をし住所と名前も教えあった
現像ができたら家に送る約束をした・・

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その日の旅情豊かな宿で
風呂から上がってから街をブラついた
夜の湖畔と山間がおりなす風情も満喫した
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帰ってから部屋で恒ちゃんと久しぶりに語り合った
恒ちゃんは末っ子だが家の跡取りになる
でも、勝也に合わせ一歩うしろから付いてくる
でしゃばらない、そんなタイプだ
身長は175cmくらいで体格もシッカリしている
が、気はやさしい
兄貴も姉も結婚して家を出てしまったらしい
父親は早死にで大きな家で母と二人暮らしだ
そのころ勝也には
友達以上の親友と呼べる人間が三人いた
恒ちゃんはその一人だ
どんなことでも隠さず飾らず気軽に話し合える
黙っていても気持ちは通じた
言わなくても相手の気持ちはわかりあえる
互いに今を頑張って悔いのないよう生きていた
話はどこまでもつきない
時計の時刻を見て驚き
やがて寝ることにした

すがすがしい朝を迎えた
この日は蓼科高原に隣接した緩やかな車山をハイキングし行きかう人たちと挨拶を交し合いながら歩いた
高原の新鮮な空気が疲れた体と心を洗ってくれる
旅の車中でも話しはどこまでもつきることはなかった
あっという間に時は進み
また絶対に二人でここに来ようと誓い合い
信州の高原にわかれを告げた・・・

楽しかった旅から帰り週が始まった
忘れないよう撮ったフィルムを持って会社にいった
会社のなかにある写真現像室の暗室で
先輩に教えてもらいながら
写真の焼きまわし引き伸ばしを
何枚も好きなように自分で現像した
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自分でやる現像は思うように仕上げられて面白い
約束通りに仕上がった写真を送った
数日が経ち、丁寧な御礼文が届いた
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親友との二人旅で
忘れられないひと夏の思い出が出来た
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長いようで短かった夏休みも終り
数人の仲間が
学校をやめ去っていった
もう8人ほどやめている
やはり働きながら卒業するまでの
四年間の夜学生活はみんな大変なのだろう
勝也は、むしろ楽しんでいた
朝起きてから歩いて駅まで12分その駅から6時45分の 
私鉄に乗って45分下車してバスに乗り換え20分
それで、やっと会社に着く
帰りは駅までバスで20分そこから
私鉄で10分駅から歩いて高校まで15分
授業を終えて
学校から歩いて15分駅から私鉄に乗って25分
最寄り駅から12分歩いて
夜9時45分頃やっと家に着く
時間との戦いだが、勝也は意外と苦にはしなかった
むしろそんな慌ただしいなかで
仕事も夜間の高校生活も生活を楽しんでいた

秋になった・・
クラスの中で気になる存在の女性が一人いた・・

《藤野瑠美子・・・》
映画の中のスクリーンに映る
吉永小百合と
その娘は同じ匂いと香りをかもしだしていた
彼女も一年遅れで入学していた
勝也より一つ下になる
昼間は大手企業に勤め
受付けの仕事をしていると聞いていた
色白できめ細かな肌の色とツヤ   
顔の表情もタイプも小百合とよく似ている
清楚なイメージで頭もいい
しかし時折影のある表情をみせた
そこがまた魅力でもある
先輩を含め学校の多くの男子が憧れ狙っていた
勝也は半年も経ったというのに
いまだに直接声をかけたことがなかった
しかし、好きになっていることが自分でわかった
とうとう想いが抑えられなくなっていた
ある日運良く一人で人気のない長い廊下を歩いていた
勝也は待ちに待ってたチャンスだと感じ
おもわずハッキリした声で彼女の名を呼んだ

「瑠美ちゃ~ん」
彼女はとっさに振り返ってくれた
美しい顔だ
「えっ な~に?」
小さな声できいた
「ちょっとはなしがあるんだけど・・」
少し間をおいてから
「ここで いま はなせないことなの?」
この廊下にはすぐ他の生徒たちがくる
勝也は周囲の目を意識し
「あしたの給食がおわってから
 アソコの庭で待ってるから その時にはなすわ」
指で校舎の外を指差した
「ほんでいい?」
瑠美子は「うん」とうなづいた
翌日給食を早めにすませ約束の庭で落ち合った
「瑠美ちゃんは今だれかと付き合っとる人がおるー?」
一瞬、瑠美子は戸惑った
「どうして急にそんなこと聞くの?」
「もし おらんだったら 俺と付き合ってくれーひんかなー」
瑠美子は真面目な顔をしてジーッと暫らく考え込んだ
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「わたしの方から またあなたに返事するわ」
「それじゃ嫌?」
「ん ほんでいいよ」
みんなに見られないよう、その場を別々に離れた
数日たった放課のとき
周囲の目を確認しながら
瑠美子が知らないそぶりで勝也の席を通った
右手で折りたたんだ小さな紙切れを
サッと勝也に渡していった
そこには
”今週の最後の授業が終わって帰るとき
 メモ書きした道を自転車に乗らないでいくから
 わからないように付いてきて
 もし、それがダメなら返事ちょうだい”
と、書かれていた

その日が来た
みんなが学校から去っていくのを見計らい
メモの通り、その道を歩いていった
生徒たちの姿は途中から全部いなくなった
その道は一駅向こうの国鉄駅に向かう道だ
前後は暗いが途中に300mほどの長さの
はなやかな銀座アーケッド街を通る
店が立ち並ぶ歩道を歩いた
アーケッド街が終わりかかる寸前の
照明の明るい光が届かない
寸前のところに
自転車のハンドルを握った瑠美子の姿があった
人目に付かないそこで待っていてくれた
近くにあった喫茶店に入りジュースを頼んだ
明日は日曜日で
仕事も学校も互いに休みだ
最終電車の時刻がくるまでゆっくり話せる
最終電車の時刻は11時30分
まだ二時間半はあった
瑠美子の家は自転車で
15分も掛からない距離だという
勝也には目の前に座った瑠美子が眩しかった
まるで夢の中にいるようだ
ジュースを持つ手も緊張してこわばっている
「おっそいのに わりーね」
「あしたはやすみだもん いいわよ」
「そんなことより」
「このあいだ あなたが言ったこと ほんとうなの?」
「まさか からかってるんじゃないんでしょうね」
「冗談じゃないよ 本気にきまっとるじゃん」
「からかうわけなんか ないじゃん」
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「ほんとだよ」
真顔になって言った
「それなら信用して言うけど・・」
何人もの会社の先輩や
学校の男の人たちから
声をかけられてるけど全部断っている
その話を聞いて勝也はフーッッと溜め息をついた
でも
「あなたのこと 最初から気になってて 
   わたしも実は前から好きだったの」
「うそだー!?」 嬉しかった
まさか、そんな言葉が聞けるなんて
同じクラスの1ツ下になる鈴木知佳代だけが
それを知っているという
知佳代は唯一の親友だともいった
言われてみれば心当たりも会る
知佳代は勝也に執拗に近づき情報を仕入れていた
それを瑠美子に伝え教えていたらしい
でも、学校のみんなに知られるのは嫌だという
同感だった
結局、OKの返事をもらった
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1時間半近くいた喫茶店をでて
最終電車のでる国鉄駅に向かい話しながら歩いた
陸橋を渡って降りたころ
勝也の頭の中をあるヒラメキが横切った
夏の終りころから書き始めた
分厚い大学ノートの日記があった
そこには最近の赤裸々な自分の思いと出来事をつづっていた
即座に、それを交換日記にしようか?と告げた
「いい考えだわ」 
「賛成 賛成」 と言ってくれた
週があけころあいを見計らって瑠美子に手渡した
書かれていた日記を
家に持ち帰って瑠美子は読んだ
数日が経った
勝也の机の引き出しの中に
教科書に混ざって日記が返されていた
家に帰ってからワクワクした気持ちを抑え
瑠美子から返された日記を覗いた
そこには何ページにも渡って
瑠美子の本音の胸のうちが書かれていた

感動と感激のつづりだった

それから、週2回程度

同じようなやり方で

連絡と互いの思いをつづった

二人だけの 交換日記の日々が始まった・・・




* **>※『 あの時 ・ あの頃 』Part 3、《瑠美子》(1) * E N D *

Continued on the following page. ・・・




















  by raymirainya | 2006-09-26 09:02 | あの時あの頃3-1

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