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※ヒューマンドキュメントストーリー【8】

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※A Certain Human Story  『 That time Those days 』

Part 3、 《  瑠 美 子   》  ・・揺さぶる悪戯・  (2) 


1964年(昭和39年)・・
勝也の日記帳に彼女がはじめて書いた落書き・・

S・39・○・○ (○曜日)
”ごめんなさい・・
 貴男の大切な日記帳に・・
 でも、少しでいいから書きたかったの・・
 書かせてね
 まず第一に感謝してください
 家庭で仕事で・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 貴男と二人きりでボートに乗ったり
 貴男のデッカイ夢を是非きかせて
 最愛の人への便りを書いていると
 限りがないのでペンを置きます Rumiko”

延々と二ページに渡って記されていた,,,,,
目の前の手の届くところに
本人が居るのに
噂され知られることを避け
人の目を気に
そ知らぬ態度を取り合った・・
日記に書かれた文字から
現実の彼女の姿が浮かび伝わってくる
そんな日がつづいた・・

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年があけた二月の最初の日曜日
瑠美子がチケットを用意し
名古屋市公会堂で行われる
梓ミチヨのコンサートにいくことにした
瑠美子との初デイトだ
先の駅から乗るので通る電車の時刻を伝へ
栄生行きの電車に乗り合流した
鶴舞駅で降り公園を散策しホールに向かった
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”こんにちは赤ちゃん”のヒットもあってか満員だ
はじめは二階席に行ったが
一階前列に空いた席を見つけ移動した
勝也は目の前の壇上で弾く
中村八大のピアノに感嘆した
譜面を見ずに全ての曲をを弾いている
いままでに勝也は、美空ひばり(大黒座)、美川憲一(市民会館)、橋幸夫(中学体育館)など生でみていたが彼等は歌手だ
作曲家でピアノの演奏家の生は始めてで
梓ミチヨもブレイク中だったがさほど興味はない
会場はファンの熱気に包まれ異様に盛り上がった
瑠美子と二人でここにこうしている
それが倖わせだった
はじめは緊張のためか
はなしが途切れがちでぎこちなかった
が、時間がそんな二人の距離を縮めていった
二人で逢って居る時はいい
それだけに別れのときがつらい
電車に乗ると、すぐ瑠美子の家に戻る下車駅についた
乗ったまま手を振り見送る
みるみる瑠美子の姿が
車窓から遠のき小さくなって見えなくなてゆく・・・

三月になると瑠美子が学校をよく休むようになった
瑠美子の居ない学校は無性にさみしい
魂の抜け殻になる
交換日記には
「体の調子がわるい」とだけ触れられていた
勝也は「頑張れ」と強くエールを送るだけだ
その内に何日もつづけて休むようになった
勝也が日記に書く文面も
一方的に強い言葉が並んでいった

そうしたある日曜日
瑠美子の誘いにより彼女の家を訪れた
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地図どうりですぐにわかった
心臓が爆発しそうだ
玄関で声をかけた
「ごめんください ごめんくださ~い」
中から品のよい母親が玄関にでてきた
深く挨拶をし部屋に通された
当たり前のことだが瑠美子が居る
ちょっと安心したような
余計に緊張したようなおかしな気分だ
母親は気を利かし二人にしてくれた
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だが、何をどう話したのかよく覚えていない
女ばかりの家に招かれたことに責任を感じた

またまた驚くことが日記にかかれている
目が点になった
瑠美子の親は離婚していた
ふりかえれば父親の話などしたことがなかった
上にお姉さんが居ると聞いている
女の細腕で母親が幼い姉妹を育ててきた
その富山県に住んでいる父親に会ったという
会いたかったが
お父さん
と、最後まで呼べなかったと書かれていた
世の中は無情だ
大人の世界は複雑だ
若い勝也に、何もとやかく言えない
ただ一つ
子供が可愛くない、会いたくない親は絶対に居ないはずだとだけ伝えた
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事情という言葉だけで片付けられない
なまじ血の繋がった肉親であるがゆえ
当事者にしかわからない問題が色々あるのだろう
所詮は他人の身、そのことについて何もいえない・・
神様は悪戯なことをする・・

三月中旬から勝也の母
たず子が高血圧で近くの小林病院に入院した
たず子は57才で決して肥えた体型でもない
標準的な体型だ
まだ夜は寒いのに体が熱い暑いという
洗面器に氷をいれ足も冷やした
8日ほど経って退院し家に戻った
その後も、長女の初美、次女の節代、三女の好恵と
女たちが家事をこなした
五つ上の長女の初美は朝早く夜は遅い
三つ下の三女の好恵は、まだ中学3年生だ
近くの大浜の塗装会社
新南工業に自転車でつとめていた二つ上の
次女の節代に一番の負担がかかった
時期悪く節代も風邪を引き体調を壊し絶不調だった
が、小柄だが芯の強い節代は
持ち前の負けん気根性でやり遂げていた
男はこんな時何もできない
迷惑かけないよう自分の出来る事をするだけだ
父親と母親は仲がいいのか悪いのか
勝也にはよく解からなかった
が、なにかにつけ阿吽の呼吸があった
結婚して30数年も経てば
夫婦はこんなものなのだろう
母親の入院中
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父親は毎日まいにち
家で居た堪れないのか酒屋を飲み歩いていた
おそらく酔えない苦い酒なのだろう
それでも八百屋まで行きおかずの買い物や
朝ご飯の仕度をしてくれていた
日を追って母の病状は正常に戻った
おそらく長年の無理がたたったのだろう

同じ時期
瑠美子もハッキリとは言わないが
体の調子が悪いという
ただの疲れか弱音だろうと安易に流していた
学年末の春休みに入った
昼間、会社に瑠美子から
電話がかかってくるようになった
受付の仕事をやってるからか電話番号を知っていた
元気そうな声だったり
調子が悪そうだったり
でも声が聞けるだけで目に浮かび嬉しかった

短い春休みは直ぐ過ぎ去る
二年生としての新学期が始まった
四月になったのに
瑠美子の休みは頻繁と増えた
週に2~3日は休んで姿をみせない
四月の下旬になると全く顔を出さなくなった
瑠美子からの連絡も途切れがちになった
そんな悶々としたある日家に手紙が届いた
嬉しさに心弾ませ封をきった
入院していると書かれている
心臓が高鳴った
谷刈市にできた総合病院の個室に居ると書かれていた
突然、頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた
春休みになる寸前から入院したという
既に、二週間が過ぎている
早速、日曜日に見舞いにいった
丁度、駅と駅との中間に位置し
新しく出来た六階建ての大きな病院だ
入り口に向かう角に寿司屋と雑貨屋が隣接してある
丁度昼時の時間だ
寿し屋に入った
食べながら持ち帰りの寿しも頼んだ
受付で病室を聞き階段を上がって部屋に向かった
静かで細く長い廊下だ
ドキドキしながらドアーをノックし
「どうぞ」の聞き覚えのある声を聞き中に入った
ベッドに寝ている瑠美子が、そこにいた
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部屋の中にベッドが一つ
窓際と小さなテーブルの上には花が飾られている
「ここ すぐわかった?」
「うん 受付できいたから」
「そう」
「いったいどうしたの」
「前から心臓がわるかったの」
勝也は何も知らないでいた
一年近くみてきたがそんな気配は感じなかった
病名を聞いてショックを受けた

「・・・・・・・・・・・」

心臓病だと聞かされ

複雑な思いが頭の中をよぎった・・・






* **>※『 あの時 ・ あの頃 』Part 3、《瑠美子》(2) * E N D *


Continued on the following page. ・・・




















  by raymirainya | 2006-09-28 12:35 | あの時あの頃3-2

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